幸せの香りをあなたに

火打ち袋の香袋

「椿の原生林」 安達瞳子の世界の名花「椿物語展」図録より 撮影/桐野秋豊氏

(こきんめいぶつるいじゅう)

 歴史ある舶来の裂は、大名家や寺社などに残されていますが、その多くは茶人の収集した裂として伝えられています。
 『古今名物類聚』は、出雲の殿様・松平不眛公(ふまいは茶人の号)によ って江戸後期に編まれた十八冊編纂の茶道具書ですが、そのうちの2冊が「名 物切の部」で、実物の百五十種あまりの美しい裂を丁寧に貼った“裂手鑑(き れてかがみ)”として超一級の価値を誇っています。

右「縞間道」(しまかんどう) 左「瓔珞文紹は」(ようらくもんしょうは)

出雲松江藩主「松平 不眛公」

 松平治郷(はるさと)・・・島根県出雲松江藩の七代藩主で、江戸時代を代表する茶人。(1751年~1818年)
 滅亡寸前だった藩は、優秀な家老による大胆な改革によって持ち直すことができるのですが、殿様である不昧公はその財政を湯水のように茶道具の収集に費やしたため松江藩はふたたび困窮してしまいます。
 しかし、彼の数寄者としての審美眼は確かなもので、貴重な茶道具の図録書を残しました。
 お茶好きのお殿様のおかげで現在でも松江の町には茶道が根付き、不眛公好みの銘菓が有名です。

 “名物裂”とよばれる布地は、中国の宗・元・明・清時代に渡って織られた中国手が半分、正倉院や法隆寺に伝来する裂が半分といわれます。
 次第に美しい染め文様やさまざまな織り地は、所持していた貴人や数寄者の好みまた、伝来した寺院の由来などから“銘”がつけられるようになりました。
 こうして定着し珍重されていく名物裂を貪欲に収集し、まとめあげたのが不眛公だったのです。

 茶道の世界では、お抹茶をいれる茶入れの仕覆が茶室での鑑賞の対象となるため、名品といわれる格の高い茶入れには貴重な裂をもちいた数枚の仕覆が添えられますが、このように布そのものに価値を見出し愛蔵の対象とした美意識に、日本人の感性の一端を知ることができるでしょう。

 現代に復元された名物裂のことを“写し裂”といいますが、復元には「本歌」とよばれる布地に可能な限り忠実に近づかなければなりません。
 彼の収集し保存した裂地のおかげで、日本の染色文化の意匠や技法がどれほど発展したか知れません・・・。

「撫子文様金襴」(なでしこもんようきんらん)
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