幸せの香りをあなたに

仄暗さの中の美しさ『陰翳礼讃』

更紗の香入れ


更紗の香入れ
 更紗とは、木綿布に華やかな文様を施した染織物をさします。
 その発祥はインドで、丈夫でやわらかい肌触りのインド更紗は、世界各国の人々に届くや爆発的な人気をはくすのでした。
 古代より、インダス河流域に文明を築いていたインドでは、その豊かな気候から織物や染色にふさわしい植物が豊富にあり、紀元前後にはすでに良質な木綿の技術を完成させていたといわれます。

 更紗には、カムラというペンで丁寧に文様を描き出す「手書き染」と木版に蝋や糊で防染しながら染め上げる「捺染」という技法があります。
 様々な国で染色は盛んにおこなわれていましたが、どこも染め上げることができなかった“華やかな赤色”の発色を“六葉茜”の根をもちいて成功させたのもインドでした。
 もともとの図柄は、回教徒の意匠や古典の物語を題材としたものが多く、これらは身分の高い人が旅行する際のテントの間仕切りやマハラジャの宮殿、寺院の壁の掛け物としてもちいられたのでしょう。

日本の古渡り更紗

 シルクロードの終着点であった日本にも、美しいインド更紗は運ばれてきました。
 1603年に設立された「イギリス東印度会社」の船長ジョン・セーリスの航海日誌には、平戸の領主にインド更紗が四反贈られたと記載されています。 この記述が日本最初の記録となりますが、これ以前にも沖縄と中国・東南アジア諸国の交易によって更紗は日本へともたらされていたことでしょう。
 古い時代の更紗は、その運ばれた国により「日本古渡り更紗」「ヨーロッパ古渡り」「インドネシア古渡り」とよばれます。
 日本の「古渡り更紗」は、室町から17・8世紀の初めまでのあいだに南蛮船や紅毛船で運ばれたものをさし、異国情緒あふれる図柄と赤の発色の美しさで当時の大名や豪族にもてはやされました。
 茶の文化が隆盛を極めていく中、審美眼のすぐれた数寄者らは愛蔵する道具をつつむ裂(仕覆)にも心をくだき、渡来物の更紗は価値をたかめていくのでした。
 前田家・三井家・井伊家などの旧家には伝来もののそうした古渡り更紗が大切に保存されています。
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