幸せの香りをあなたに

魅惑の動物性香料

アンバーグリスの伝説

 アンバーグリスとはいかなるものか?
 その昔、アンバーグリスとは謎の存在で、多くの伝説をつくりあげました。

 人々を不思議がらせた不可解な物体は、大きさも様々に灰白色から褐色の色をして、蜜を固めたような艶のある肌をしていました。
 そしてなんとも不愉快な生臭い悪臭を放つこの塊ですが、不思議なことに他の香料に少量混ぜると、女性の体臭にも似た官能的な香りが生まれるのです。

「龍涎香(アンバーグリス)」
 こうして次第に珍重され始めたこの不思議な塊は、なかなかその正体がつかめず様々な伝説を生み出しました。

アンバーグリスの伝説

 などなど、じつにたくさんの想像力豊かな説が生み出されました。
 9世紀ごろアラビアから中国に渡ったアンバーグリスは、中国の神獣である“龍(ドラゴン)”と結び付けられ、龍のよだれが固まったものに違いないとして『龍涎香(りゅうぜんこう)』という名前がつけられました。
 中国でも大変に珍重された龍涎香ですが、いつまでも香るすぐれた保留効果を語ったじつに楽しい伝説が残されていますので記しておきましょう。

『香談・東と西』 山田憲太郎著/法政大学出版局より

 じつに夢のあるお話ですね。
 それほどまでに、アンバーグリスの芳香は人々を驚かせたのでしょう。

 このようにして関心を集め、様々に語られてきたアンバーグリスですが、時の流れと共にその実態が解明されていきました。
 その正体は、現在マッコウクジラの体内にできた病的結石との見方が有力です。
 クジラの体内で生じ体外に排出された結石が、海面を漂い砂浜に漂着するなどして発見されたのでしょう。
 ときに大きな塊がクジラの解体のさいに見つかることがありますが、それもすべてのマッコウクジラからとれるものではありません。
 ゆえにアンバーグリスの採取は、現在でも数少ない偶然に頼るほかないのです。
 以前、テレビのお宝鑑定番組で沖縄の砂浜に打ち上げられたアンバーグリスが登場し、そのあまりの高値にため息を付いたことがありましたが、捕鯨が禁止されている今となっては、この香料はさらに貴重品であるといえるでしょう。

 では、たくさんいるクジラの種類の中で、どうしてマッコウクジラにだけこうした結石ができるのでしょうか?
 採取されたその塊を分析してみると、かならず好物のイカやタコのくちばしが原形のまま残っているのが見付かります。
 そのため、消化されないこれらのカスがクジラの内臓を傷つけ、体内の様々な分泌物とともに結石となってかたまるのでは、と推測されています。
 しかし、いまだ確実な解明にはいたっておらず、アンバーグリスの不思議な芳香は、現在もなおベールに包まれているといえるでしょう。

←「幸せの香りをあなたに」トップへ戻る
↑このページの一番上へ