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魅惑の動物性香料

シベットの野獣的香り

 シベットとは“麝香猫”という動物から得られる分泌物ですが、麝香鹿と違ってオスとメスの両方から採ることができます。
 アフリカからインド・中国・マレーシアまで広く生息する麝香猫は、夜行性の食肉獣で気性がとても荒く、洞窟や岩の間に巣をつくってほとんど単独で行動しています。

 シベットは、エチオピア・ギニア・セネガルの国々に生息していますが、現在エチオピアではシベットの飼育が産業として成り立っており、最高の品質を誇るエチオピアペーストは、おもにフランスやアメリカの香水メーカーへと輸出されています。

「ジャコウ猫」
「シベットのペースト」
 オリで飼われている麝香猫は、肛門と生殖器の間にある香腺にシベットをたくわえます。それらは熟練者によって一週間から10日ごとに10グラムほどをヘラで掻き出されるのですが、特に痛みはないようだということです。
 むかつくほどに野性的悪臭を放つ分泌物は、すぐにペースト状になり、以前は水牛の角に詰め搬送されましたが、現在では匂いが流れ出さないようにアルミニウムの容器が使われています。

 この香料も、ほかのアニマルベースの香料と同様に希釈することで素晴らしい芳香へと変化するのですが、古代エジプトの女王クレオパトラは、この妖艶なシベットの香りを身体にすり込むなどしてふんだんに使い、ローマ帝国のシーザーやアントニウスらを魅了したと伝えられます。
 ヨーロッパに伝わったのは16世紀ごろで、いつまでも消えないシベットのセクシーな芳香は大変な人気を博しました。
 イタリア・メディチ家の姫君カトリーヌは、最新の香料技術を携えてフランス王のもとへと嫁ぎましたが、彼女の愛した皮手袋には、ムスク・アンバーグリス・シベットの香りがつけらました。

 当時、貴族に愛された革手袋には、獣臭やなめす時に用いる薬品の悪臭を消す目的で香りがつけられましたが、こうした動物性の香料は皮に大変なじみが良く、皮の風合いをしなやかに保ったのでしょう。
 保留効果の高い動物性香料は、革製品の強烈な匂いを拭い去り魅惑的な香りを放って貴族たちを存分に楽しませました。
「17世紀前半の皮手袋」
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