香りと室礼作品

蝉の訶梨勒

蝉の訶梨勒

材料


 その昔、幻といわれた訶梨勒の実は、スッとしたニッキのような芳香をそなえていますが、香料としてだけでなく薬としての価値も高いものでした。
 光明皇后が、亡き夫・聖武天皇の冥福を願い正倉院におさめた数々の御物の中にもその名は記載されています。

 仏教が伝来したばかりの奈良時代、香の使用は宗教的儀式を執り行うさいに不可欠なものでした。
 異国からもたらされる貴重な香料は、薬としても大切に管理されてきたのです。なぜなら、神々がことのほか愛する香料植物には人知の及ばない力が宿っており、その力は人の病をも癒すと考えられていたからです。

 光明皇后が東大寺へ謙譲した薬種は60種といわれ、その詳細は「種々薬帳」に細かく記載されていますが、平安時代、栄華を謳歌した藤原道長も服用したと伝えられる訶梨勒は、「一切風病の治療薬」として万病に処方されました。

 今回は、吉祥の文様でもある蝉をかたどった装飾掛香に、訶梨勒の実と伝統的な香料を調合しておさめます。
 複雑に絡み合うそれぞれの香りは、やがてひとつの完成された芳香を放ち雅やかな室礼となることでしょう。

←「香りと室礼作品」トップへ戻る
↑このページの一番上へ