『香り花房・かおりはなふさ』では、日本の香りと室礼文化を研究しています。

香り花房 ー『香りと室礼』文化研究所 ー
源氏物語の香り

 梅は、奈良時代に中国から伝来したお花で、その香りは日本の春を象徴する代表的なものでした。

「花といはば かくこそ匂は ほしけれな・・・」

 これは、光源氏が初春に咲いた紅梅の枝を手にして最愛の女性“紫の上”に語りかけた言葉です。
  “紫の上”という方は、源氏が幼少の頃に見初めて奪うように手元に引き取り、自分の好みに育て上げた美しい姫君で、物語の中では理想の女性として登場します。

白梅の花

「花という以上は、これくらいよい香りがして欲しいものですね・・・」

というこの言葉には、暗に“紫の上”と梅の花を重ね合わせて、彼女の素晴らしさをたたえているのでしょう。
  まだ雪解けもせぬうちにほころび、清らかな香りを漂わせる梅の花を、厳しい冬から抜け出すきざしのように人々は感じ、大切に思われたのでしょうね。

 プレイボーイの源氏に最も愛されたといわれる“紫の上”ですが、じつはこの時期、彼は26歳も年の離れた“女三の宮”という姫君を正妻に迎えようと考えているのでした。年を重ね、やっと落ち着いた暮らしが訪れた矢先の思わぬ出来事に、悩み伏せている“紫の上”の機嫌をとるため源氏の君は彼女の元を訪れたのでしょう。

 この物語が千年に渡り読み次がれている要因には、幸福そうに見える人にも苦悩が潜んでいるということを見事に描き出しているからなのです・・・。

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