
橘は、柑子と呼ばれる2~3センチほどの小さな密柑のことです。
やはり中国から伝来した植物ですが、その渡来はたいへんに古く、古事記や日本書紀にもその記載がみられます。
ここで、「古今和歌集」におさめられた、和歌をご紹介しましょう。

~五月に咲く橘の花の香りをかぐと、昔愛した人が焚き染めていた香りが思い出されます~ |
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花橘のやさしい香りは、かつて縁のあった恋人の思い出を呼び覚ますのでしょう。
光源氏も、どこからともなく漂い来るこの花の香りをきき、ある女性を思い出すのでした。

“花散里”という方は、源氏が昔愛したきり遠のいていた女性です。
懐かしさから久しぶりに訪ねてみると、すねる様子もなく以前と変わらない優しさで迎えられ、疲れきっていた源氏の心はなごむのでした。 その控えめな人柄が、橘の花の香る様子にふさわしく、彼女を表す花として物語に登場します。
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