紫に対する思いは日本だけでなく、地中海沿岸に生きる人々においても特別な色でした。 ローマ帝国以前に文明を築いた海洋国家フエニキアでは、パープル腺という紫の色素を内臓にもつアクキガイ科という巻貝から、鮮やかで妖艶な赤紫の布を染め上げる秘法を生み出します。
しかしながら、ひとつの貝から取れる染料はごくごくわずかなために大変に貴重かつ贅沢なもので、1グラムの染料をとるのに2000個もの貝が必要でした。
その染色法は、やがてギリシャ・ローマへと伝えられ、ジュリアス・シーザーが貝紫の衣をまとう権利を独占するなど、紫は帝王の象徴として「帝王紫」「ロイヤルパープル」と称されるようになります。
また、エジプトの女王クレオパトラは、シーザー暗殺ののちに跡を引き継いだ恋人アントニウスからローマへ出向くよう促されたとき、自分の船の帆を見事な貝紫に染め上げ、クローブの香りをなびかせて入港していきました。
権力の強さをひと目で象徴する赤紫の美しさに、クレオパトラを憎く思っているローマの人々は誰もが驚嘆したことでしょう。
貴方はこの“紫”という色にどのような印象を抱いていますか?
色彩心理学では、この色を身につけることで、悲しみを癒し、崇高な気持ちへと引き上げてくれると説いています。
たしかにそうした神秘性が、この色にはひそんでいるのかもしれませんね。
では、最後に「枕草子」にある一節をご紹介しましょう。