
2016年12月7日
2016年もあとひと月あまりとなりました。
街にはクリスマスのイルミネーションがはじまり
キラキラと輝いて寒さを忘れさせてくれるようですね。
我が家も少しだけ聖夜のお飾りをいたしましょう。
板地にキリストが描かれたイコンを壁にかけ
大理石風の円柱には、
水晶を溶かして成形した燭台に
友人からのフランス土産に頂いたロザリオを飾ります。
手前の器は「IHS・蒔絵中次」
「IHS」とは「キリスト教カトリック修道会・イエズス会」のこと。
当品の本歌は、
縁切り寺として有名な鎌倉・東慶寺さんが保持なさっている
キリスト教祭具のひとつで、
聖餅(オスチャ)をいれるための容器です。
1549年、イエズス会の宣教師であるフランシスコ・ザビエルは
キリストの教えを広めるべく日本へと赴きました。
異国の地での布教はどんなにか大変だったことでしょう。
そこで彼らは、
日本の工芸品である美しい蒔絵をもちいた様々な祭具を設え
布教に挑んだのでした。
東慶寺に伝わるこの器は室町時代の品で、
重要文化財の指定を受けている大変貴重なものなのです。
蓋表には、標章であるIHSの文字の上に螺鈿で十字架が描かれていますね。
その下には磔刑に処されたキリストの三本の釘が象徴的にはめ込まれ
文字を囲むように放射状に配置された太陽のような光の光線は、
茨の冠をあらわしているといわれます。
器の側面には、
金銀の葡萄唐草が全面に描き込まれたこの美しい聖器には、
キリストの受難と神の栄光が刻み込まれているのです。
私のもっている器は本歌を小ぶりにして、
茶道の抹茶を入れる棗(なつめ)に仕上げたものです。
いつの日かクリスマス茶会など催すことができたら素敵ですね。
床にベネチアンガラスのツリーと
ズーと昔から使っているライトを灯して
今年も心静かにクリスマスを迎えたいと思います。