僧侶が身につける袈裟は、
香料で染めた”香染め“の香衣が本来の形でした。
古くは木蘭(もくらん)という香る樹の皮で染めていましたが、
次第に丁子を煮出して染めたものを香染めというようになります。
香染めは僧侶の袈裟として紫についで位の高いものでした。
京都の知恩院では十二月の“お身拭い式”の行事で
香染めの羽二重の布を用い御尊像である法然上人の像を拭い清めます。
甘みと辛みが混在する丁子のかぐわしい芳香は
袈裟に仕立ててからもなを残り、僧侶たちの心身を高みへと導くことでしょう。
奈良時代、仏教の教えとともに日本へもたらされた様々な香料は、
平安貴族たちによって、楽しむためのものとして暮らしに取り込まれていきました。
沈香・白檀・桂皮に丁子など渡来の香料には、
身体だけでなくソッと心を癒す効能が秘められているのです。
『言寿ぎ(ことほぎ)』 とは言葉によって祝福すること、
この銘にのせて自然が与えてくれた上質で豊かな天然の芳香を
伝統ある美しい裂地に包み、皆様にお届けいたします。
調合 | 沈香・老山白檀・桂皮・丁子・甘松・大茴香・貝香・龍脳 |
---|---|
裂地 | 右「有職文様・柳襷花菱(やなぎだすきはなびし)」・打紐・翡翠玉 中「花紋暈繝錦(かもんうんげんにしき)」龍村美術織物・打紐・玉 左「敷松葉文様裂(しきまつばもんようぎれ)」龍村美術織物・打紐・玉 |
中国唐の時代に日本へともたらされた文様が日本好みへと変容したもの。
柳の線が斜めに交差した中に、
花びらを四枚描いた花菱がデザインされた代表的幾何学文様。
平安時代には、高貴な人々しか使うことの許されていなかった格調高い有職紋。
正倉院に伝えられる文様。
“うんげん”とは、同系色の濃淡とそれに対比する色調の濃淡を
段階的に配することで装飾的な効果を生む色彩法。
縦に配された縞の上に、四弁と六弁の花を規則正しく並べた美しい錦。
茶の湯では、庭や路地に枯れた松葉を敷き詰めて
霜から苔を守るとともに冬の詫びた風情を楽しみます。
爽やかな水色に金糸で松葉を織りだしたこの裂は、
皇室のローブデコルテなどにも用いられる気品あふれる文様です。