
2011年3月に刊行しました著書が、嬉しいことに増刷されることになりました。
思い出せば初版発売予定日をあと半月あまりに控えたあの時、東日本大震災が発生し日本国中は悲しみと混乱の渦中に落とされました。
八坂書房の三宅さんに発売の自粛延期をご相談したところ
「関東は被害が少なかったというものの印刷機械が破損しそれでも納期に間に合わせようと努力してくださった方々がおられるのですよ。文化活動を休止してしまうことは日本の活力の低下につながることでしょう。予定通り進めてはいかがですか?」
との助言をいただき発売に至ったのです。
美術館の展示も軒並み中止となるなか
東京芸術大学美術館で開催予定の「香り展」はどうにかギリギリに開催が決まり、私の本も図書として販売していただけることになりました。
今も様々なことを思い出しますが、お陰さまで一年後の2012年4月には完売となり今回表紙を新装して増刷していただけることになったのです。
ものごとには、すべて意味があるといわれます。
本の完成と未曾有といわれるほどの災害が重なったのにも何かの訳があるのでしょう。
私は仕事を通じて先人たちの様々な人生に寄り添うように漂う香りをご紹介し、生きることの美しさや奥ぶかさをお伝えしたいと考えてきました。
生あることは素晴らしいこと、たとえ今苦しくても、もがきながらも懸命に生きれば
最後には目に映らない何かが得られるのではないのでしょうか。
何事をするにも時間のかかる私ですが、20年を経てようやく形となったこの本を励みに
これからも頑張っていきたいと思っています。