2015年7月10日
日本列島は四方を海で囲まれた島国で、
4つの大きな大陸と3700もの島々で構成されています。
春夏秋冬の四季がはっきりとした山河豊かなこの列島は、
縦に細長いため南北で気候が大きく異なります。
亜寒帯気候の北海道、
温帯の本州
そして亜熱帯気候の沖縄まで、
小さい国土ながらも地域ごとに多彩な自然環境を有しているといえるでしょう。
今回は、小さな島々が連なった南国・沖縄諸島に育まれる
香りある植物を観察してみることにしましょう。
沖縄の香料植物
ヤマクニブー(もろこし草)
一年に一度、
梅雨明けの知らせとともに刈り取りが行われる
沖縄独特の香り草。
ヤマクニブーとは方言名で、
ヤマは“山”クニブー“九年母”はミカンをさし、
ミカンのような花と実が付くことから名付けられました。
その昔、
琉球王国の女官らが防虫のために衣装箱におさめた
といわれる歴史ある植物で、
刈り取ったのちに蒸して乾燥した束を
家のいたるところに吊るし虫よけにも利用されました。
柑橘系にカレーにも似たスパイシーな心地よい芳香をもっています。
香料にある零陵香は、
もろこし草の近縁種といわれます。
伊集の花(いじゅのはな)
奄美諸島に分布する
ツバキ科の常緑高木で、
5~6月の沖縄の梅雨のころいっせいに
ツバキに似た清楚な白い花を咲かせます。
その香りはジャスミンとイランイランを合わせたような甘い芳香で、
華やかな中にも気品を感じさせる香りです。
「イジュの木の花や あんきよら咲きゆり
我もイジュやとて 真白咲かな」 辺野喜節(びぬちぶし)
“イジュの花が清らかに咲いております。
私もあの花のように美しく真白い花を咲かせたい・・・“
琉球王の愛を一身に集める女性を
ソッと見つめる王妃が、
私もイジュの花のように美しく生まれたならば、
と悲しい心情を詠んだもの。
降りしきる雨の中、
甘い香りをあたり一面に放ちながら咲く白き花は、
沖縄の清楚な女性の美しさの象徴といわれます。
イジュの花の「ひたむきな愛」
という花言葉にふさわしい
逸話をまとった琉歌といえるでしょう。