2016年2月
お教室で製作しました菊の節句飾りをご紹介します。
「茱萸囊(しゅゆのう)・別名ぐみ袋」は、
五節句の一つである9月9日の
「重陽の節句」に飾られます。
美しい裂地は古布店で見つけた時代物の帯地。
松模様の中に
長い尾をひるがえした2種の鳥が舞い飛んでいます。
造花には菊花とグミをとり合わせるのが決まりですが
グミの造花はありませんので、
枝に赤い実を取り付けグミ枝を制作しました。
収納を考えて、
造花部分は取り外せるようにしておきましょう。
飾り紐は、
裂地に合わせて”えんじ色”に染めていただき
格調高く房を「編みかけの房頭」に仕立てました。
嚢のデザインは、絵師酒井抱一の
「五節句図・重陽宴」を参考として縦長に。
茱萸嚢(しゅゆのう)のいわれをご紹介しましょう
秋の深まりとともに色づきはじめ、
グミやクコのようなプルンとした赤い実をつける
“山茱萸/さんしゅゆ”。
古代中国では9月9日の重陽節に、
実のついた山茱萸の枝を頭に挿して小高い山に登り、
気持ち良い秋の風に吹かれながら
菊酒を飲んで災いを払う風習がありました。
これが日本へと伝わり奈良平安時代の宮中では、
菊花と赤い実をつけた山茱萸の造花を
“あわじ結び”を施した美しい袋に飾る
茱萸嚢が作られ、
翌年の端午の節句の薬玉飾りと掛け替えるまで
自邸の御帳台の柱などに吊るし魔除けとしたのです。
茱萸嚢の中には
乾燥した“呉茱萸/ごしゅゆ”の実をおさめます。
呉茱萸とは、
その葉が井戸に落ちると水毒を消し去ることができると伝えられるほどに
薬効が高い漢方薬の生薬で、
未成熟な果実を乾燥し
1年以上寝かせその毒性を弱めてから処方されました。
ピリッとした独特の強い芳香には、
虫を遠ざけ毒を消し去る力が秘められおり、
辛みが強い程に良品といわれ邪気や病い
湿気までを取り除く力がみなぎっているとされています。
ミカン科の落葉小高木
神農本草経に収蔵
ピリッと刺激のある独特な芳香をもつ
頭痛・嘔吐・健胃などに効果を発揮
別名 / ニセゴシュユ・カラハジカミ
袋を開けると、じつにクセの強い芳香に驚かされるでしょう。
しかしミカン科のせいだからでしょうか。
嗅いでいるうちにどことなく
馴染のある香りのような感じがしてきます。
今よりももっともっと寒かった日本の冬に
家族とみんなで一緒に炬燵に入り
寄り添って食べた
固くて青い、おもいっきりスッパいミカンの
はじけるような懐かしい芳香が
ふと思い出されました。
いつまでも大切にしていただけるように
紐付きの桐箱に収め完成といたしましょう。