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ブログ更新 その76「芙蓉の香莚 ~香と室礼~③」

2017年6月28日    「芙蓉の香莚 ~香と室礼~③」

 

 

~芙蓉の間~ 和室 点心席

 

『蝶芙蓉』掛け軸狩野探幽

 

切支丹花十字紋・四季花鳥圖香箪笥 

 

正倉院の香料

「黒漆螺鈿装飾春日卓・切支丹花十字紋香箪笥・正倉院の香料」

 

「長崎サント・ドミンゴ教会の花十字紋瓦」 サント・ドミンゴ教会跡資料館より

 

サント・ドミンゴ教会は、

スペインのドミニコ修道会の神父フンシス・デ・モラーレスによって

1604年長崎県長崎市に建てられた教会です。

時の将軍徳川家康は、当初キリスト教の信仰を黙認していましたが、

その信仰が拡大するにつれ、

1612年に禁教令そして宣教師国外追放を発令するにいたります。

この措置により徐々にキリシタン迫害は厳しいものになっていくのでした。

 

1614年になると長崎のほとんどの教会は破壊され、

さらに潜伏キリシタンの摘発、処刑がおこなわれました。

サント・ドミンゴ教会も壊され、跡地には代官屋敷が建てられます。

 

2002年、市立桜町小学校の敷地となっていたこの場所で

校舎建て替え工事による発掘調査によって教会の遺跡が発見

花十字紋が刻印された瓦も見つかったのです。

 

 

 

 

「花十字紋が外面に描かれた蒔絵香箪笥」

 

厳しい監視体制の中、信仰を捨てず隠れキリシタンとして活動していた人々は、

秘かに集会を開き観音像を聖母マリアに見立てたり

花に十字架をデザインした小さなメダイなどを信仰の対象とし

教えを守り続けたと伝えられます。

 

 マリア観音像(子供を抱く慈母観音)  wikipediaより

 

今回はこの美しい蒔絵香箪笥に、正倉院に伝えられる香料を並べ展示しました。

 

正倉院の香料  

「正倉院の宝物」とは、

奈良時代に崩御された聖武天皇の遺愛品を中心に保存されたものです。

后である光明皇后が、ご供養のため奈良の東大寺に献納されました。

日本の伝統工芸品はもとより

唐の時代の中国文化やインド・ペルシャなどの

美しくエキゾチックなデザインを今日まで伝えています。

注目したいのは、その目録の薬とともに香料が記載されているということでしょう。

 

2017-06-06 02.12.32 「白檀・カリロク・丁子・貝香・八角・匂い菖蒲根」

 

根来銘々皿に盛り付けた六種の香料は、

各人が手に取り香りを嗅いでいただきました。

 

目録「種々薬帳」にある六十種類の薬種

 

仏教伝来にともない神聖な儀式に不可欠なものとして渡来した

沈香・白檀・丁子・桂皮などのさまざまな香料は、

生きるうえでなによりも大切とされた薬と同様に管理されてきました。

なぜならば、神々がことのほか愛する香料植物には

人知の及ばない不思議な力が宿っており、

それらは人の病をも癒すと考えられていたからです。

 

天平時代の香料は、

生薬としての役割も高く大変に貴重なものだったといえるでしょう。

 

 

 

軸「絹本蝶芙蓉圖」 狩野探幽筆 

 

 『蝶芙蓉』掛け軸狩野探幽

 

江戸幕府の御用絵師の中でも、早熟の天才絵師と伝えられる狩野探幽。

江戸城や二条城・名古屋城の障壁画(襖絵)や屏風の他、

京都大徳寺にもたくさんの作品を残していますが、

中でも三十五歳の時に描いたといわれる法堂の天井画「鳴き龍」は、

手をたたくと龍が鳴くように響くとして大変有名です。

 

 

_20170619_213755  軸「絹本蝶芙蓉圖」狩野探幽筆 

 

 

じつは私はこのお軸が大変好きでして、

色合い静かなこの絵を見ると父を思い出すことができるのです。

もう他界しまして十八年たちますが、

お葬儀の時に集う人々を眺めるように

塀の上に蝶がヒラヒラと舞っていまして

八月のお盆に近い暑い盛りでしたので、不思議なことと眺めておりました。

 

蝶は魂の化身ともいわれますが、

なにか見守られているように感じたのです。

 

意図したわけではないのですが、

今回の三点の室礼にはどこかに蝶が隠れていますので、

どうぞ探して見て下さい。

 

 

このお話をしたのち、ある参加者さんから

明月軒の草蔭に黒い大きな蝶が舞っていましたよ。

きっとお父様が見に来られたのではありませんか。

 

というお話を伺い、なんだか胸が熱くなりソッと手を合わせるのでした。

 

 

最後に香会の様子をご覧いただきましょう。

 

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香道研究家の林先生、お着物がとっても素敵ですね。

今回も準備の段階から様々なご助言をいただきました。

 

香の歴史の楽しいお話、組香の丁寧なご指導そして、

貴重な香木まで拝見させていただきまして

本当に心より感謝申し上げます。

 

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ご参加いただきました皆さま

今回はお香二席ともにたくさんの方にお集まりいただきました。

 

風薫る五月を想定していましたが、

当日は初夏を思わせる暑さとなり、

皆さま倒れないかと急遽ペットボトルのお水をお配りしました。

思いがけないことがおこるのですね。

 

色々と至らぬこともあったことと思いますが、

今回の経験をもとにし、またいつの日か

心に残るような思い出深い会を開催できますよう努力してまいります。

 

 

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そしてお手伝いいただきましたスタッフの皆さま。

本当にありがとうございました。

皆さまの細かい心配り大変素晴らしかったです。

 

 

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当初は不安ばかりで眠れない日々をおくっていましたが、

こうして多くの人々に助けられ無事に会を開催できました事

 

本当に嬉しく、心より感謝と御礼を申し上げます。

ありがとうございました。

 

 

 

『香りと室礼文化研究所』 宮沢敏子

 

 

 

 

 

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