2013年8月
”蓮のお茶”をご存知でしょうか?
小さな手漕ぎ舟で蓮池を縫うように進み、
蓮の花弁の中に茶葉を詰めてその清らかな芳香を茶葉に移すという
繊細なロータスティは、
数がかぎられたほどにしか生産できない憧れのお茶です。
おもむろに口に含むそのときを夢に描いていましたが、
残念ながら、今回の旅では巡り合うことができませんでした。
幻のお茶は以前幻のままですが、
かならず出会えると信じて、その瞬間を楽しみにいたしましょう。
しかしこの旅で、たいへん美しい蓮の花を写真におさめることができましたので、
ぜひご覧下さい ♥
フワァと剣先が優しいピンクに染まった大輪の花びらは、
ばらつきながらも見事に咲き誇り
まるで太古の様相をはくしたているかのよう
あまりの美しさにウットリ見とれてしまうのでした。
この花は、ジャングルの中を小舟でゆくメコン川クルーズへの帰途に立ち寄った
広大な敷地を持つレストランの蓮池で出会いました。
皇太子さまも訪れたというこのお店は、
お料理も美味で最高でしたが
なにより敷地全体の雰囲気が素晴らしく、
ぜひ訪れていただきたい場所のひとつです。
ホーチミンへと戻り一休み
夕暮れになり
オシャレな通りといわれるバスター通りを歩いていると、
たまたま店先にディスプレイされてあったシフォンのワンピースに目が止まります。
店主は日本の女性でとても美しい方。
様々なお話をして、このあたりに良いレストランはありませんか?
と尋ね紹介していただいたのが、ご主人が経営なさっているという
「 Huong Lai 」
というお店です。
彼女は、ご主人と巡り合ったことでベトナムの地に暮らすことになったとのこと。
人の人生はわからないものですね。
どんなに恋焦がれ、何年もそばにいても結ばれない二人
かと思うと、出会った瞬間に人生を共に歩む相手となることも
ご縁とは本当に不思議なものですね。
などとお話をして、予約をしていただいたご主人のお店へ向かいます。
階段を上りレストランへはいると
ウーン、とても良い感じ
過度な装飾はなく、かといって寂しすぎず
綺麗な風が店内を流れています。
サーと現れたのは店主の臼井氏。
アイロンのきいたストライプのシャツに
背筋の伸びた姿は堅苦しくなく優しげな目元をしています。
彼には大きな志を持つ人が放つオーラのようなものが溢れていました。
素材にこだわったベトナムの家庭料理はもちろん美味しかったですが、
心にとまったのは、他の店では感じることのなかった若いスタッフの方々の表情でした。
人の目を見て丁寧に話す、
その瞳の奥には働くことに対する喜びや誇りが感じられたのです。
お話を伺えば、臼井氏はストリートチルドレンや孤児など経済的に恵まれない子供を
スタッフとしてむかえているとのこと
彼らは自分のお金で教育を受け、仕事を学び、そして巣立っていくのです。
素晴らしいことですね。
日本人が異国で、意義ある活動をなさっていることに深く感動しました。
そして各テーブルには、薫り高いジャスミンの花蕾が
水をたたえた小さな器に 飾られており
気品あふれるその香りは、
まるで彼の清らかな心を表すかのように感じられたのです・・・。