2021年1月
古びた木箱とともに、時代を帯びた天冠が手元へと届きました。
輝いていたであろう金銅は緑青がふき、いたるところに欠けも見られます。
でも何故かその姿はリンと美しく、大変心惹かれるものでした。
時代『金銅鳳凰垂下飾り稚児天冠』
日本には、神々に祈りをささげる神事が大切に継承されてきました。
人々は祈りを通して、国家の安泰と暮らしの平安そして様々な困難を乗り越えてきたのです。
長きに渡り幼い子供の頭に飾られてきたと思われる稚児天冠。
見詰めながら様々に思いを巡らしていると、ふと以前目にした古神宝が頭に浮かびます。
それは京都・下賀茂神社の東本殿に祀られている国宝の天冠で、
江戸時代の式年遷宮の折に調整されたものでした。
金銅製の盤を、押し鬘(かずら)と呼ばれる山形の透かし彫りにして三方に巡らし、
正面に双葉葵の飾りをほどこしたうえ、
両側面には日陰蔓をかたどった長い組紐が垂らされています。
なんともいえない神秘をまとったこの御天冠は、
下賀茂神社の祭神である玉依媛命の冠として大切に保管されてきた社の宝なのです
下賀茂神社の調度品は、
宮廷文化の影響を色濃く残しているといわれます。
それは、起源古くはるか奈良時代まで歴史を遡ることができる故なのでしょう。
さあ、私のもとへときてくれた天冠をどのように飾りつけましょうか。
台は、神事にふさわしい朱塗りの三宝と決めました。
そして冠座の敷布には、雅な有職裂を用いることに致しましょう。
子供それも女の子の頭にかぶる冠ですので愛らしい印象の裂を探します。
こちらの裂はいかがでしょう。
ぼかした三段染の色合いが大変華やかで美しいですね。
敷布には房飾りも付けることにいたしましょうか。
さあ、どんな室礼になるでしょう。
完成のあかつきには皆様にぜひご覧いただきたいと思います。
どうぞ今しばらくお待ちください。