2014年2月11日
ソ連のソチで開催している冬季オリンピックが白熱していますね。
その昔、恥ずかしさも何のその
スキーのリフトで降りてきたという逸話をもつ運動音痴のわたしとしては、
どの競技を見ても人間業とは思えず
只々目が丸くなるばかり
人に秘められている能力とは素晴らしいものですね。
そんな最中、東京は週末 2度もの大雪にみまわれました。
灰色の上空からフワフワと湧き出るように降ってくる雪を見つめ
人影のないシーンとした街をながめていると
知らない場所へと迷い込んだかのような不思議な感覚にとらわれます。
こんな寒い夜には
ホットワインで温まりましょう♥
赤ワインにシナモンステックと八角を
星の形をした八角(スターアニス)は
抗インフルエンザ薬 ”タミフル” の原料として有名です。
フェンネルにも似た独特の甘みと強い苦味・辛味を持ったこの香辛料
北京ダックや杏仁豆腐のあの風味は八角によって生み出されているのですね。
また薬効も高く
喉の炎症を抑え、消化促進作用・強壮・抗がん作用も期待できるといわれています。
友人ご夫妻との会食でいただいたこのホットワインのおかげで
厳しい寒さにこわばった身体も
ゆっくりゆっくりほぐされていくのでした。
お風邪をひきそうなんて思うときにも良いでしょう。
ぜひお試し下さい♥
2014年2月10日
鼻煙壺というのをご存知でしょうか。
鼻煙香の歴史と鼻煙壺( Snuff Bottle )
15世紀末、コロンブスのアメリカ大陸発見にともない
先住民が嗜んでいた煙草の習慣はヨーロッパへと伝わり、
宮廷貴族のあいだで大きな話題となります。
当時タバコには薬効があり気付け薬としてまた
頭痛や喘息にも効くと信じられていました。
さらに同時期、ヨーロッパでペストやコレラなどの伝染病が蔓延したことにより、
疫病予防のひとつの手段としても受け入れられていったのです。
未知の新しい感覚であった煙草は人々の心をつかみ、
1641年にはスペインに煙草製造工場も建設されるようになります。
英国王のためのスナッフボックス
中国へと伝わったのは17世紀中頃で
当初はイエズス会の宣教師によって
清朝皇帝など権力者たちへ贈呈されました。
”鼻煙香”とは、
粉末状にしたタバコの葉に龍脳や麝香などの香料を調合したもので
極少量を小皿や手に受け鼻から吸い込んだり鼻孔にすりつけたりして
その芳香刺激を楽しむものです。
ヨーロッパでは、粉を入れる専用の嗅ぎ煙草入れとして
金銀や宝石などをちりばめた箱型のスナッフボックスが作られました。
しかし、湿気の強い中国では密閉することが必要となり、
薬瓶をヒントに小さな口にコルクで蓋をし
細い匙を差し込んで粉をすくい出す容器が生み出され、
玉や瑠璃・硝子・陶磁器・象牙などを素材とした精工な鼻煙壺が誕生していきます。
なかでも”内絵鼻煙壺”は、
小さな口から耳かきほどの竹製の筆を差し込んで
内側に絵を描くという精緻な技法がもちいられました。
神仏の姿や自然を謳歌する春の花々、
読み仮名が恋につながる蓮、
仙女の愛する果実桃また、
神獣鳳凰や龍
など文様には福を呼び込む縁起の良いモチーフが選ばれ
”掌の上の芸術品”として人気を博しコレクションの対象となっていきす。
やがて海外からの使節にお土産として渡された中国の鼻煙壺は、
ヨーロッパに渡り香水瓶のデザインの元となっていくのでした。
お香屋さんにいくと紫檀や黒檀・桜の木などで作られた
伝統的な円形の塗香入れを見かけることでしょう。
塗香とは、手や身体に香をすり込んで
穢れをはらい清めるためのパウダー状のお香のことを指します。
香の使用が始まったとされる酷暑の国インドでは、
油に白檀のペーストや香る材をいれた香油をつくり
頭痛や発熱のおりに額や身体に塗って熱苦を取り去り
清涼感を得る風習がありました。
なかでも白檀は非常に高い殺菌力をもち、
皮膚を浄化して毒を消す力が秘められているといわれ、
塗香の主原料にもなっています。
私は常々、好みの塗香入れを探してきましたが、
今回硝子の鼻煙壺に出会ったことで
皆さんと一緒に塗香の調合をと思い立ちました。
塗香は神仏や自分の心と向き合うときに使うもの、
故にくだけすぎずまた長く愛用できるものを求めていたのです。
インドで誕生した仏教が日本へとたどり着く道筋となった国・中国の美しい鼻煙壺を器とし、
それぞれの感性をいかしたご自分だけの塗香を調合してみましょう。
2014年 1月11日
大きなカカオの実がなっております。
じつは、バリ島への旅で思いがけないことがありました。
なんと生きた麝香猫を目にすることができたのです。
ジャコウネコとは、香料の世界で大変貴重な
動物性香料を採取できる4種の動物のうちのひとつで、
もちろん日本には生息しておらず
じっさいに見ることができるなんて想像すらしたことがありませんでした。
思い出しても、とっても興奮してしまいます♥♥♥
猫さん檻の中で恨めしそうにこちらを眺めていますね。
「アーアそんなに見ないでよ」
なんて決して幸せそうに見えませんが、
カカオやコーヒーなど栽培しているこの植物園は、
あの世界で一番高価と言われる麝香猫コーヒー
「KOPI LUWAK」(コピ ルアク)の生産元だったのです。
後ほどご紹介しますその作り方を聞かれて
ウッと思われる方もおられるかもしれませんが、
生産量の少ない大変稀少なコーヒーなのです。
ウーン、香りがまったく違います。
素晴らしい香味
通常のコーヒーと聞き比べをするとよくわかりますが、
鼻の奥から脳へシベットといわれる麝香猫の
神秘的なペースト香が
ローストしたコーヒーの心地よい芳香と合い交じり
独特の香りをはなち立ち登ってくるのです。
赤い実は、麝香猫が餌としているコーヒー豆
グルメな彼らは、熟した美味な豆しか食しません。
体内に入った豆の種は消化されず、糞と一緒に排出されてくるのですね。
それらをキレイにし、じっくりと煎り、
さらに棒で突いて粉状にしたものが コピ・ルクア です。
バリでは、カップにコーヒーの粉を直接入れ熱湯を注ぎ
沈むのを待って飲みます。
アララ糞なんて、と思われる方もいるかもしれませんが
1995年には、世界一高価なコーヒーとして
「イグノーベル栄養学賞」にも輝きました。
麝香猫の腸内の消化酵素の働きや発酵によって
人を魅了する独特な香味が豆に加わる
本当に貴重な産物なのです。
日本の珈琲専門店でもだされているとうかがいますが
一杯たぶん1500円から5000円程かと思います。
しかし、その品質にはバラつきがあるようです。
もともとは先進国の人々にコーヒー豆を残らずもっていかれ
現地の人々が捨て置かれた麝香猫の糞にまみれた豆を綺麗にして
飲んだことより発見されたといわれる麝香猫コーヒー。
恐れずに、どうぞお試し下さい。
バリ島は、本当にさまざまな顔を見せてくれました。
バリの観光は、一般的に個人で車をチャーターし時間制で案内していただきます。
お世話になりました、わたしたちのガイドさんをぜひご紹介しましょうね。
お名前は、通称ウイッキーさんです。
もと免税店でお仕事をしており、現在は観光ガイドのほか車やバイクのレンタルもなさっています。
英語も日本語もとてもお上手ですし、こちらの希望をちゃんとくみ取り案内してくれますよ。
ふたりのお子さんのパパでとても人柄の良い方です。
風邪気味にもかかわらず、深夜までお付き合いいただき本当にありがとうございました。
また、ぜひ訪れたいと思っています。
どうぞバリにお越しの際はご連絡ください。
mobile : + 62 878 626 30379 または + 62 812 398 4930
phone : + 62 361 2765 108
Email : tudewicky@yahoo.com
今回、私たちはホテルではなくヴィラというプール付きのコテージに泊まりましたが
周りにはオーストラリアやヨーロッパの家族連れやカップルが
1ヶ月も長期滞在するヴィラが多数ありました。
彼らは、スクーターをレンタルしてビーチに行ったり寺院を巡ったり
また夜の街に繰り出したりと本当に自由気ままに休日を楽しみます。
近所にはイギリス風のパブや欧州のベビーミルクやお菓子の並ぶスーパーなどもあり
日本のお休みと随分違うものと
なんとも羨ましく感じて帰国した次第です。
最後に、毎朝朝食を作りに来てくれたハンサムさんのお写真を。
バリの人々は、日本人よりも小柄で細く、
はにかんだような笑顔で接っしてくれます。
マスコットの猫さんも自由気ままに歩き回り
足元でおやつをオネダリなどして可愛かったです。
また、朝の目覚めはまるでジャングルの中にいるかのように
さまざまな鳥たちの鳴き声が響き渡るのでした。
2013年12月17日
『京洛四季』「年暮る」東山魁夷 1968年山種美術館蔵
「 去りゆく年への心残り 来たる年へのささやかな期待 」
親交の深かった川端康成から
「いま京都を描いておいていただかなくては」と懇願された東山魁夷は、
古都の四季の景色を残すべく京都を巡る旅へとでかけます。
シンシンと雪の降り積もる夜半の屋根瓦を、
東山ブルーと評される独特の色彩で表現した最後の作品「年暮る」は、
すべての音を吸い込む雪中の静寂の中、
窓辺にともるほのかな灯りが年の瀬の人々の静かな営みを感じさせ
なんとも感慨深い作品となりました。
誰もが一年をふりかえる年の暮れ、
街を歩けば綺麗に清められた家々に常緑の松やしめ縄が飾られ、
新春を迎える日本の美しい習わしに心を打たれます。
今回は、新年を寿ぐ日本人の精神を、
「稲」というかかわりの深い植物をとおして少し考えてみることにしましょう。
『天岩戸の神話』
わが国最古の文献で、
神々による国創りの物語が綴られている『古事記』には、
天照大神(アマテラスオオミカミ)という太陽神が登場します。
ある日、天照大神がおさめている高天原へ
弟である須佐之男命(スサノウノミコト)が訪れます。
しかし、身体は立派な大人ながらも精神的に幼く乱暴者の彼は、
酒に酔って乱暴狼藉を重ねてしまうのでした。
あまりの振る舞いに怒った天照大神は、
“天岩戸”という岩屋にお隠れになってしまいます。
さあ大変、大神の光を失った世界はまたたくまに暗闇となり、
いたるところに悪神がはびこりはじめます。
困った八百万(ヤオヨロズ)の神々は相談をし、
岩戸の前でにぎやかに祭りをはじめることにするのでした。
舞の上手な神様の肌もあらわな踊りにワッと笑いの渦が巻き起こり、
その賑やかさに興味をそそられた大神が
岩戸を少し開いて覗こうとしたそのすきを逃さず、
力持ちの神様が岩戸をグッと引き開けて大神を表へと連れ出し、
まわりに “しりくめ縄” を引きめぐらし戻れないようにします。
するとどうでしょう
真っ暗だった世界がみるみる明るさを取りもどし、
ふたたびこの世に平和が戻ってくるのでした。
この神話に登場する縄が “しめ縄” の起源だといわれています。
縄をはりめぐらすという行為には、
結界を張るという意味があります。
新年の玄関にしめ縄を飾ることで、
家中と外との境界となり災いをはね退け清浄な場を保つことができるのですね。
縄は藁で編まれますが、
農耕民族である日本の稲作は縄文時代からはじまりました。
当初は石包丁で穂のみを刈り取る「穂刈り」でしたが、
弥生時代後半になると朝鮮から鉄鎌がつたわり根元から収穫する「根刈り」となり、
残った稲藁を使って
米俵・草履・むしろや籠など様々なものが作られるようになっていくのです。
お米と同様に精霊が宿っているとされる稲藁で編んだ縄は、
神社や御神木などに飾られるとともに
日本の正月に欠かせない神聖なものとしての役割をになっていくことになります。
お正月のしめ縄に使われる藁材は、出穂前の稲を刈りとって作られるため、
青さの残るその新鮮な香りが大変みずみずしく
新年にふさわしいといえるでしょう。
今年収穫された稲穂と榊葉をもちいて「五穀豊穣の稲穂飾り」を製作しました。
重たげに穂を垂れる稲を一本一本清めていくと
どこか懐かしいような稲藁の香りに包まれ
幼い日に父の田舎で嗅いだお米の収穫の風景が浮かんできます。
パンやスパゲッティなどが食卓に並ぶようになり
子供の頃のように毎日食することのなくなったお米ですが、
旅先の車中からながめる田んぼの風景は、いつも私の心を和ませてくれます。
爽やかな五月の風に揺れる水面の早苗
天に向かってに伸びゆく初夏の若草
重たげに穂を垂れ実りにさえずる雀たち
そして、収穫の後の静まり返った田の風景
季節とともに変わりゆくその景色に触れるたび、
自然の摂理がかくも正しく循環しているように感じ心は安堵するのでしょう。
日本の原風景といえる稲田は、これからどうなっていくのでしょうか。
できることならば、
未来の子供たちともこの感慨を共有したいものと願います・・・。
2013年10月
11月の香りレッスンで皆さんと製作する匂い袋の準備中です。
きれいに刺繍された薔薇のモチーフをみつけましたので
お見せしましょうね。
なんて美しいのでしょう♥♥
お教室の準備にこのところいろいろな場所に出向きましたが、
このバラ刺繍に出会ったとき
イメージがまたたく間に浮かびがりました。
布地には温かみのあるベルベット
豪華なタッセル飾り
そしてバラの美しさをキラキラと引き立てるガラスやビーズ
英国のヴイクトリアン時代を懐かしむように仕上げましょう。
美しいものがたくさん誕生し
装いも夢のように華やかだった時代です。
こうして準備を進めている時間がなんとも好きで、
みなさんの喜んでくださるお顔を想像しながら手を動かしていると
アッというまに時間が過ぎ去ってしまいます。
今回は、女性に生まれた喜びを中に詰める濃厚な薔薇の香りとともにお届けしましょう。
どうぞ、お楽しみに・・・・・♥