雪月花
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その39「菫の砂糖菓子と香るハンギングサシェ」

2015年3月9日

 

春の予感タップリの今日この頃、

桜の満開の花ビラ越しに

青い空眺める幸せが訪れるのも間もなくのことでしょう。

 

こんな季節には気持ちも華やぎ

エレガントで夢あふれる作品を作りたくなりますね。

 

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この愛らしいシートはお好きな布地に転写できる

ヴィクトリアン転写プリント」です。

凹凸の少ない布地の上に絵柄を下にして載せ

熱くしたアイロンをギュッとかけるだけで

簡単に転写しプリントできるのです。

まずは、このプリントをもちいた「フレグランス・ハンギングサシェ」を作りましょう。

 

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こんな感じに仕上がりました。

ハンドルをつけたのでドアノブやクローゼットなど

お好きな場所にポンと引っかけてくださいね。

 

ビィクトリアン柄が浮きあがるように織られた白い布に

転写したプリントを貼り付け

その周りに額縁のように

 

レースやフリル赤い野イチゴの実や

ミニバラ真珠

アジサイなどを飾ります。

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サシェの中には、温かい芳香を放つ

カモマイルのポプリを詰めましょう。

 

 

20150228_140112  chamomile キク科・カミツレ属

カモマイルには

甘いリンゴのような香りがあり

人の心を一瞬で優しく包みこみます。

 

ハーブティーにしても大変おいしく、

黄色い花粉に含まれるアズレンという成分が

花粉症に効果を発するともいわれています。

 

イギリスの絵本作家ポーターが描いたピーターラビットの物語にも

お腹をこわしたときのお茶として登場していますね。

蜂蜜を少し加えると、さらに美味しくいただけるでしょう。

 

若き日、初めて一人で参加した海外ツアーで

ポーターの故郷であるイギリスの湖水地方を訪れました。

木の温もりあふれる彼女の生家には

ピーターラビットを描いたという木製のテーブルに

広げた状態の原画がポンと置かれておりました。

 

手を触れても良いのかと思うほどの

そのあまりの無造作ささに驚かされるとともに

心優しきポーターの手から生み出された原画が発する光のようなものに

フーとため息するのでした。

 

彼女の生涯をたどってみれば

決して派手なことを好まず

静かながらも芯のあるその人柄と、

自然を何よりも大切に思い私財を投じ広大な野山を保護した生き方に

尊敬と憧れの念を抱くことでしょう。

 

 

 

さあ、今回のサシェのレシピは

 

ジャーマンカモマイル  大匙 2

ラベンダー       大匙 2

ローズペタル      大匙半分

月桂樹         1枚

クローブ        小匙 1

シナモンスティック   半分

 

精油は加えず、ドライハーブとスパイスだけで優しい香りに仕上げました。

 

それでは次に、

春を代表する草花「(すみれ)」を美味しく食べていただきましょう。

 

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エディブルフラワーの代表ともいえるスミレは、

ヨーロッパだけでなく

アジア・北アメリカなど原産地が多岐にわたり

200以上もの種類をもつといわれます。

春の訪れと共に大地から頭をもたげ

恥ずかしそうに咲き出でるこの花を愛する民族は多く、

古代より様々に利用されてきました。

 

美しい紫の色と香りを熱湯にうつし甘みをつけたスミレのシロップ

眠れない夜のナイトキャップに、

 

ブドウ酒に漬け込まれた大量の花弁は

3回ほど漬け変えられたのち蜂蜜を加えスミレのリキュールにまた、

 

花びらをゆでてつぶし粉・ミルク・ハチミツをあわせて作られたスミレ菓子

ヴェルサイユの貴婦人たちにおおいに好まれました。

 

ロマンティックで愛らしいスミレを口にすることは、

本来の薬効よりも

さらに大きな心理的効果を挙げたことでしょう。

 

 

クリスタライズドフラワー(砂糖菓子)

 

ハーブやお花をもちいた

可愛らしい砂糖菓子の作り方をお伝えしましょう。

お茶に添えたりケーキのお飾りにしたり、

そのままシャリシャリ食べても美味しい

クリスタライズドフラワーは

お友達へのプレゼントにも大好評です。 

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材料  エディブルフラワー・グラニュー糖・卵白・パラフィン紙

 

作り方

 

お花はサッと洗って水気をふき取ります。

卵白を切るように攪拌し

お花の裏と表に筆などで丁寧に塗り

グラニュー糖の上において両面をまぶしつけ、

パラフィン紙の上に並べ

2~3日乾燥させたら出来上がりです。

 

パラフィン紙を持ち上げるようにして丁寧にはずし、

乾燥剤を入れた容器におさめて冷蔵庫などで保存すれば

1~2ヶ月は美しい状態で楽しめるでしょう。

 

きれいに仕上げるポイントは、

写真にあるように逆さにして乾かすことでしょうか。

逆さにすることで花弁が折れることなくきれいに乾きます。

どうぞ、お試しください・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2015年03月09日 up date

その38「愛らしい天平の花喰い鳥」

♥♥2015年 2月1日

 

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久しぶりのご挨拶です。皆様おげんきでしたか

厳しい寒さの中、徐々に明るく変化していく陽射しにが近づくのを感じますね。

 

じつは年の瀬12月28日にバタバタと高輪に引っ越しをいたしました。

ダンボールの山に中で新年を迎え、

荷物整理や転居にともなう手続きや、新しくしたパソコンとも格闘しているあいだに

あっという間に一月が過ぎ去り、

ようやく静かな生活を取り戻すことができたところです。

 

20150104_144534  マンションのお庭に咲く冬桜

 

さあ、今年も良い作品作りに努めましょう。

 

今月は、昨年より作成してきました作品の完成です。

 

 

 

愛らしい天平の花喰い鳥 

 

 

正倉院御物に見られる華やかな天平時代の文様は、

いつの世でも人々に喜びと感動とを与えてくれます。

中でも小さなクチバシで花をついばむ ”花喰い鳥文様” は、

その愛らしい姿とオリエンタルな趣

大変人気のあるデザインといえるでしょう。

クチバシに植物の枝をくわえた鳥の意匠は、

聖書にあるノアの箱舟の物語に登場する

オリーブをくわえた小鳥に由来しているともいわれます。

 

 

今回は、ぼかし染めされた古布

薄綿を被せて作る”押絵”という手法を用いて

眺めているだけで心温まる小さな花喰い鳥をつくります。

 

 

 

 

 

20150208_121549 こんな風にパーツパーツを作り組み合わせ作品を仕上げていきます。  

 

 

 

 

頭には繊細な蓮花型に作られた金銀の天冠を、

尾には尾長鶏の様に三種類の天然羽毛をスーとなびかせ

華麗さを演出してみました。

 

赤いクチバシパールの花弁に輝石をはめこんだ枝花をくわえ

軽やか鈴の音とともに舞い降りる小鳥は

あなたのもとへと幸せを運んでくることでしょう。

 

 

 

 

 

 

2015年02月08日 up date

その37 「羊が一匹・・・冬の日の安眠ハーブ」

2014年 11月28日

 

都心の銀杏も色づきはじめ、

朝晩と冷え込む時節となりました。

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日暮れも早くなり

何もかもが

静かに落ち着きを取り戻していく

これからの季節には

心も身体もゆったりと休めたいものですね

 

 

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今回は、幸せな眠りのために

心地よく香るフレグランスピローをつくりましょう。

まぶたの上に乗せて

羊さんが一匹、羊さんが二匹・・・・・

魔法の呪文を唱えると

深い眠りの世界へと導かれていくことでしょう

 

左の長いものはダブルガーゼ羊さんプリントでつくった

のせるだけアイピロー」です。

中にはフラックスシード(亜麻の実)に

清らかな香りのラベンダー

暖かい芳香のオールスパイス

さらにサマーセーボリーマジョラムなど

メディカルな効能のハーブをミックスしました。

 

フラックスシードの心地よい重さが

眼のツボを優しく刺激し筋肉をほぐしてくれることでしょう。

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また、お揃いの布地を用いて

今流行りの小豆カイロを作りましょう。

体を温めることは体調を整える基本

電子レンジに30秒ほどかけ

肩やおへその下など気になる部分に乗せてください。

小豆に含まれる水分が

患部をジワーと蒸気で温め、身体の深部までとどきます。

小さいながらも大活躍の小豆カイロ。

どうぞ、愛らしいハートのミニパット

癒されてください

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2014年11月28日 up date

その32 「蓮の室礼 3 ”蓮のポプリ”」

2014年 9月12日

 

蓮の香り

 

泥の中に咲く神秘的な花 ”蓮”。

結実したその実の重さ頭をもたげ

種を水中へと落として生涯を閉じるこの花に

特別な想い抱く方も多いことでしょう。

私自身も水面からスクッと頭を出し

ユックリと蕾を開かせる姿をながめる時、

まるでが集められていくかのような眩しさ感じるのを不思議に思うのです。

 

 

その花は、早朝5時から6時にかけて少しずつ花びらを開き始めます。

主に雄蕊から放散されるという芳香は、

真夏の厳しい陽差し浴びるにつれ

水面の蒸気と相まって甘い香りをあたり一面に漂わせるのでした。

開いては閉じるを3日ほど繰り返した花びらは、

やがて力を失うかのようにホロリを散りゆき、後には青い花托のみが残ります。

蜂巣の実の成熟とともに固くしわがれ

褐色へと変化していった花托は、

20日の後には生命の全て子孫へと託し

頭をもたげ力尽きていくのでした。

 

蓮花 (2)

 

「蓮の実のポプリ」には、

再生を願って終焉を迎えた様々な植物を取り合わせて

器に盛り付けましょう。

姿楽しい木の実たち・種を宿した草々花のサヤさらに、

ツル何だかわからないけれども面白いドライとなった植物も加えましょう。

皆それぞれにをまっとうし枯れてもなを輝きをうしなってはいません。

 

香りには、強い香気の中にも魅力的な甘さを秘めた3種の香辛料に、

神聖な白檀安息香丁子の精油を加え、

水面のようにキラキラと輝く龍脳の結晶を加味して

天上の花にふさわしい高貴な香りにしあげます。

 

~蓮の実のポプリ~

 

香料

大茴香     2ヶ

丁子       小さじ半分

シナモン     2本

龍脳       小さじ半分

匂い菖蒲根    小さじ1

白檀オイル    3滴

丁子オイル    1滴

安息香オイル   2滴

 

 

匂い菖蒲根(刻みオリスルート)を小袋にとり、

3種の精油を垂らしてよく揉み込みます。

大きな密閉できるパックに蓮の花托や木の実をあわせ、

大茴香・丁子・シナモンをあらく砕き龍脳も加えましょう。

すべての材料をザックリ合わせましたら、

密閉し2~3週間熟成させてください。

やがて個々に主張していたの香りの角がとれ、

お互いが寄り添うように一つの完成された芳香へと仕上がります。

 

 

その香りは「素直な心のままに身を委ねられる香り」

と言ったら良いでしょうか。

奥深くそして気品あふれる芳香が部屋をそっと包み込みます。

 

熟成が完了しましたら

蓮の魅力をひきたてる器を選びキレイに盛り付けてみましょう。

このポプリは、蓮の花咲く盛夏ではなく

心静まる秋からから冬にかけて飾っていただく室礼となります。

 

 

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私が選んだのは伊万里の焼き物です。

大中小とあるそれぞれの器には、

ゆったりと泳ぐ亀さんと水草・水紋が描かれていますが、

上野の不忍池の蓮池にたくさんの亀がいたのを思い出し

この器を選びました。

 

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お料理のように中高にそして立体的にポプリを盛り付けます。

 

共にしつらえたお軸は、泉福寺「装飾華厳経切」そうしょくけごんきょうきり)。

平安時代に写経されたものです

 

平安時代、写経は本格的な書写に先立ち、

貴重な紙を漉き一巻の巻物に作ることから始まりました。

この泉福寺の華厳経は、

藍の染料で染めた紙の繊維を再びに溶き漉きあげた上に

金の揉み箔を散らした美しい料紙が使われています。

釈迦入滅後、

二千年を経過すると悟りを得る者は一人としていなくなるという末法思想は、

飢饉や疫病の続く平安人に不安をつのらせ、

末法の到来を予感させるものでした。

人々は阿弥陀如来に救いを求め、浄土信仰が盛んとなります。

そうして仏への帰依に基づいた写経は、盛んに行われる事となるのでした

 

このお軸との出会いは、父が亡くなった時でした。

父の葬儀の時、古物を扱っている義兄がそっと飾ってくれたのです。

私の心が、現世を去り天へと召した父へと向かっていたからでしょうか。

連なる端正な文字を眺めていると、

何とも表現しがたい美しさに心が引き込まれます。

 

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それ以後このお経が

私の心から離れることはありませんでした。

一年を経た頃、

父の供養にぜひ写経を飾りたいと思い立ち

義兄に相談したところ、このお軸を譲ってくれたのです。

それからこのお軸は、わたしの無二の宝物となりました。

 

蓮のポプリと共にしつらえると

香りとともに、目を伏せて静かに微笑む

頑固で一途だった父の面影が思い出されます・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2014年09月13日 up date

その31 「蓮の室礼  2 ”浄土の香り”」

2014年9月6日

 

浄土の香り

 

『維摩経(ゆいまきょう)』というお経の中に、

香積如来(こうしゃくにょらい)が住まわれるという

「衆香国(しゅうこうこく)」のお話が記されていますのでご紹介しましょう。

その国は一切がでつくられております。

楼閣はかぐわしい香木でできており、園にある植物は香樹香花に満ち、

食する香飯(こうぼん)の香りは世界の隅々にまで漂うほどで、

これを口にしたものは心身が安楽になり

全身から芳香を発するようになるといわれます。

香積如来は言葉による説法はおこなわず、

香樹の下でただ種々の香りを聞かせて天人たちを導きます。

菩薩たちは妙なる香りを嗅ぐことで仏の教えを理解し

一切徳蔵三昧」の境地へと導かれるのです。

 

敦煌の壁画には、

神聖な蓮華の香りを振りまいて教えを説く香積菩薩の絵が描かれています。

衣がユッタリとたなびき大変優美なお姿ですね。

 

敦煌の壁画

「蓮香を振りまく香積菩薩」第61窟

香積菩薩

「蓮・100の不思議」

蓮文化研究会著書/ 出帆新社より

 

 

神秘に満ちた香りには、

魂を震わせ心を正す力が秘められているのでしょうか。

古代エジプトの神殿でアラーの神に捧げられた薫香

教会の大きく揺れる銀香炉より白く立ち昇る香煙

そして仏前で僧侶の読経とともに焚かれると、

いにしえの時代より祈りの場では香りが重要な役割を担ってきました。

 

人々は香りに包まれることで

神聖な空間に結界をつくるようにその場を清浄へと導き、

おおいなる神と交信する手立てとしてきたのでしょう。

人知の及ばない天が生み出した妙なる芳香には、

言葉を尽くした説法にも勝る

宿っていることを改めて思うのでした・・・。

 

2014年09月06日 up date
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