2013年8月2日
京都の「ない藤」さんでしつらえた夏ぞうり は、
パナマの台に側面を白のパール加工した皮で仕立てたもの。
パナマは本来、紬や小紋の着物に合わせたぞうりですが、
皮をあしらうことでもう少し格の高いお着物にも使用できます。
ある紳士が「夏の着物姿は本当に美しいですね」
とおっしゃっていましたが
幼い頃、真夏のギラギラした日差しの中を、白い日傘を片手に涼しげに足を運ぶ着物姿のお姉さんを見て目を奪われた記憶が鮮明に残っています。
はたしてその時より、いつかあのような憧れの着物姿を・・・と願ってきました。
暑いのをお首にも出さず、見る人をも涼しげに感じさせる着こなしが夏着物の第一でしょう。
本当は暑いのですよ。モチロン
しかしながらオシャレは時として、努力と我慢が必要なのですね。
とにもかくにも、私もあの時のご婦人を思い描きながら
暑くないナイ、絶対に暑くナイと、暗示をかけ夏着物にチャレンジです。
京都・宇野商店さん主催の夏茶会は「祇園祭」の趣向で、それは楽しいお席となりました。
2013年 祇園祭の禿さんに選ばれたご当主の息子さん慎一郎くんは、小学三年生の元気な男の子。
千年も続いてきた祭事のお稚児さんや禿に選出されることは大変名誉なことですが、
ご家族にとっては様々な儀式しきたりを経ての大事になります。
祭りのあいだ、稚児は神の使い”生き神様”へとその姿をかえ 禿も稚児を護る大切なお役目を担っているのです。
その祇園祭も七月三十一日に無事終了しお祝いも兼ねての茶会は、
長刀鉾をかたどった背丈ほどもある床飾りや 引き車を模した風炉と釜、
そして祇園祭を何よりも愛したという織田信長が、八坂神社の神紋を模してつくったモッコウ紋のはいった風炉先屏風などの 祇園祭の趣向に、
先斗町から呼び寄せた芸者さんの舞とお座敷までついた華やかなものとなりました。
以前、京うちわで有名な「阿以波(あいば)」さんを訪れたとき、
ご主人から幼い息子さんをお寺さんのお手伝いに行かせている、とのお話をうかがいました。
何もわからない子供でも、この千年の都に継承されてきた行事に参加することで、
その場に漂う空気感や大人たちの交わしている会話などが
自然と肌身にしみついていくのでしょう。
京都の伝統は、このようにして守られているのですね。
宇野さんの慎一郎くんも茶会でお運びのお役をつとめ
子供らしい愛嬌のある笑顔やタタミに頭をするほどの深いおじぎの仕草で場をなごませていましたが
禿さんという大役をすませたばかりだったからでしょうか、
八坂神社の神様のご威光がまだその内に残っているような、そんなふうに感じられたのでした。
今回は、ゴブラン織りやペルシャ絨毯など舶来の品々を山鉾飾りにしつらえたことに習って
わたしも舶来の更紗でまとめてみました。
数寄屋袋は 数年前に仕立てたお手製のインド更紗、古ぶくさは生徒さんからいただいた江戸更紗です。
このような素敵なお席にお誘いいただきました公文先生に、
この場を借りまして心から感謝申し上げます。