薬師寺とご縁の深い生徒さんより
「修二会花会式」に供えられた「作り花」をいただきました。
修二会とは仏教儀式のひとつで、
旧年の穢れを祓い国家の安泰と有縁の人々の幸福を祈願する法会のことで
東大寺二月堂のお水取りは大変有名ですね。
薬師寺ではご本尊である薬師三尊像に、丁寧に作られた十種の造花をお供えします。
梅・杜若・百合・菊そして椿など作り花の作業は古来の伝統を継承し
和紙を薬草で染め、花形に裁断、それぞれのパーツを丸めよじるなどして成形したのち、
米粉を火にかけて練り上げた糊を用いて竹串に貼りながら一枝ずつ丁寧に作り上げていくのです。
薬師寺にはかつて広大な薬草園がありました。
漢方薬としての効能をもつ薬草で染めた花会式の作り花は、
儀式ののち信徒さんら配られ、人々は大切に持ちかえり薬として用いたと伝えられます。
紫に染まる紫根は火傷や切り傷の薬に、茜や紅花は婦人病に
そしてウコンには皮膚病を癒す薬効がそなわっているのです。
薬が大変貴重だった時代、人の病を癒すという薬師如来の霊験をあびた花々は
どんなにかありがたかったことでしょう。
父の冥福の祈りとともに写経を飾り、薬師寺の作り花を献花いたします。
台は螺鈿と金具で装飾された黒漆時代春日卓をもちいました。
合掌をした愛らしい聖徳太子の香合とともに
仏器である象耳華瓶(けびょう)花入れに、心を込めソッと花をたむけます。
真白く清らかな椿の花に顔を近づけると
ほのかにお香の匂いが漂うのでした。